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最近ダウンロードしたアルバム(7)ーボーダレス化するヨーロピアンジャズ [Jazz]

昔、ヨーロッパのジャズといえばフランス、イタリア、それに北欧諸国等を真っ先に思い浮かべた。しかし今は、西はポルトガルから東は東欧・ロシアまで、ヨーロッパはジャズがあまねく盛んだ。しかも、ヨーロッパらしく、ひとつのアルバムに多国籍のミュージシャンが参加することがごく一般的なので、その曲風も、昔のようにちょっと聴いただけでフレンチジャズ、イタリアンジャズ、北欧ジャズ等々と区別がつかず、グローバル化している。
また、昔はヨーロッパでも日本同様、頭角を現したミュージシャンは渡米して世界的に有名になっていったし、つい10年ほど前のアフリカンジャズブームもそうだったと思うが、今は現地で質の高いジャズアルバムをどんどん発表している。それは、ここでも1枚取り上げたオーストラリア、ニュージーランドにおいても同様の状況にある。今やジャズはアフリカンアメリカの音楽から完全に脱皮し、グローバルでボーダレスな現代音楽に成長した。
アップルミュージックをはじめとする音楽配信サービスも、その傾向に拍車をかけている。毎週、有名・無名を問わず、等しく、多くのニューアルバムが配信される。リスナーは、その音楽を何の先入観もなく聴ける。昔、ジャズ雑誌を読んで、各レーベル推奨のアルバムを買わされていた頃と比べると雲泥の差で、世界のジャズシーンが一気に可視化された感がある。

2.jpgSANDRO ROY SOUVENIR DE PARIS ★★★★★ 23歳のドイツのバイオリニスSANDRO ROYの2枚目のアルバム。ジャズバイオリンといえば日本では寺井尚子がまず思い浮かび、この作品も彼女のリシャール・ガリアーノとのセッションなどを彷彿させる曲もあるが、よく聴くと全然バイオリンのキレが違う。SANDRO ROYは幼い頃からクラシックバイオリンを学び、いくつもの賞を受賞してきた。しかし、彼の演奏は単に技巧的に優れているのみならず、ジャズスピリットを豊かに表現している。その自信のほどは、ハンガリーのロマ系ベテランバイオリニスト、Roby Lakatosと3曲で共演し、のっけからガチンコ勝負のバトルを繰り広げていることからもうかがえる。アルバムは、ドイツのJermaine Landsbergerトリオをバックに、フランスのアコーディオン奏者Marcel Loefflerが加わった演奏も4曲収録。

5.jpgMENAGERIE The Arrow Of Time ★★★★★ オーストラリアのファンク・バンドBamboosのギタリストLance Fergusonが結成したグループ。Lance Fergusonはニュージーランド生まれのオーストラリア育ち。Phillip Noy(sax)、Ross Irwin(tp) 、Mark Fitzgibbon(p)、 Mick Meagher(b)、 Ben Grayson(kb)、Rory McDougall(ds)、Javier Fredes(per)、Fallon Williams、Jade Macrae(vo)はすべてオーストラリア人のミュージシャン。最初のクラブジャズ風の乗りのEvolutionに少し引いたが、最も長い2曲目のタイトル曲はじめ、21世紀の新しいジャズの可能性を示しており、昨秋このブログでも紹介したカマシ・ワシントンの作風などにも通じるものがある。それにしても、オーストラリアン・ジャズの躍進は目覚ましい。

4.jpgGABOR GADO – LAURENT BLONDIAU VEIL AND QUINTESSENCE ★★★★★ 1957年ハンガリー生まれのギタリストGABOR GADOと、1968年ベルギー生まれのトランペッターLAURENT BLONDIAUのデュオアルバム。ブリュッセルで録音。これも次のアルバム同様、バッハ的クラシックの色彩を漂わせた曲調のECMテイストの作品だ。また、LAURENT BLONDIAUのトランペットは、故ケニー・ホイーラーの晩年の作品を思い起こさせるものがある。





3.jpgKIT DOWNES OBSIDIAN ★★★★☆ KIT DOWNESはイギリスの若手ジャズピアニスト。しかし、全編オルガンによるこの作品はほとんどクラシック、それも宗教音楽に近い範疇に属するアルバム(各曲のタイトルも宗教的なものを連想させる)。いかにもECMらしい1枚だ。ただし、KIT DOWNESは教会で昔オルガンを弾いていたそうで、むしろ彼にとっては原点回帰となる作品。一般のジャズファンには馴染みにくいかもしれないが、バッハファンの私にはとても親しみが持てるとともに、厳粛な気持ちで聴ける秀逸な1枚。5のみサックスのTom Challengerが参加。3つの教会のチャーチオルガン(パイプオルガンの概念で造られた電子オルガン)で収録したという。基本的に深夜にひとりで聴くにふさわしい。

1.jpgROBERTO TARENZI JAMES CAMMACK JORGE ROSSY LOVE AND OTHER SIMPLE MATTRERS ★★★★☆ イタリアの中堅ピアニストROBERTO TARENZIとアメリカのベーシストJAMES CAMMACK、スペイン生まれのドラマーJORGE ROSSYのトリオの演奏。ROBERTO TARENZIのピアノはイタリア人らしいメリハリの効いた演奏。




(これらのアルバムは、最近Apple Musicを通してダウンロードしたアルバムを紹介しています。)


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最近ダウンロードしたアルバム(6)ーコルトレーン、モンクへの賛歌 [Jazz]

5.jpgWAYNE ESCOFFERY VORTEX ★★★★★ 1975年イギリス生まれのアメリカのサックス奏者WAYNE ESCOFFERYの力作。特に1曲目のタイトル曲はコルトレーンのジャイアントステップスをも彷彿させる迫力ある演奏だ。また、わたし的には、唯一ソプラノを吹いている5のThe Devil’s Denがいい。8曲目にトランペットのJeremy Peltが加わる。以下のサイドメンも手堅い。
Wayne Escoffery - tenor & soprano saxophone / David Kikoski – piano/ Ugonna Okegwo – bass/ Ralph Peterson, Jr. – drums/ のカルテットのメンバーに、ゲストとしてJeremy Pelt - trumpet (track 8) / Kush Abadey - drums (tracks 5 & 8) / Jacquelene Acevedo - percussion (tracks 4, 5 & 6)が加わる。

1.pngSIMON CHIVALLON FLYING WOLF ★★★★★ フランスのピアニストSimon Chivallonのリーダーアルバム。ドラムのAntoine Paganotti、ベースのGraud Portal、ソプラノサックスのBoris Blancheとのカルテット。ほかにアルトサックスとトランペットにBaptiste Herbin、Julien Alourが参加。しかし、聴くべきはソプラノサックスのBoris Blancheだ。最初のCallを聴いてSonny Fortuneのコルトレーンへのオマージュ‘IN THE SPIRIT OF JOHN COLTRANE’でのTRANE AND THINGSを思い起こさせた。だが、TRANE AND THINGSがあまりに陰鬱で壮絶なのに対して、Callは突き抜けた爽快さを感じさせ、よりコルトレーンに近い。そして、そうしたトーンが全編を貫いている。フレンチ・ジャズらしさを全然感じさせない、ソプラノサックス好きの私にはたまらない一作だ。

7.jpgMAST THELONIOUS SPHERE MONK ★★★★★ 昨年はセロニアス・モンク生誕100年ということで多くのトリビュートアルバムが発表された。私の一押しは山中千尋のMONK STUDIESだが、独創性という面では引けを取らないアルバムが本作だ。山中の作品同様、エレクトリックサウンドに加えて、ビッグバンド編成でモンクを再解釈している。1970年前後のマイルスを思わせるジャケットデザインは日本人アーティストによるとのこと。MASTことTim Conleyはギター、ベース、キーボード、シンセサイザー等マルチ楽器をこなしている。他に、各種サックス、トランペット、トロンボーンの管楽器とアコーステイックピアノ等が加わる。


1.jpgDEANNA WITKOWSKI MAKES the HEART to SING: JAZZ HYMNS ★★★★☆ DEANNA WITKOWSKIは1972年生まれのアメリカのジャズピアニスト。教会音楽に強い影響を受け、それはこのアルバムにも表れているが、私はなぜか、彼女のピアノタッチを聴き、同年代の日本のピアニスト、Sayaの10年ほど前に発表された何枚かのアルバムを思い出した。Sayaの音楽はアメリカ西海岸のもっと洗練されたセンスに溢れていたが、そのピアノタッチを想起させたということは、DEANNA WITKOWSKIに女性らしい繊細さを感じさせるからだろう。疲れた時に心を癒してくれる、そんな音楽であり、そこが教会音楽にも通じるところだろうか。トリオの演奏だが、ほとんどソロピアノの印象を受ける。

6.jpgFrog of fog  Frog way back ★★★★☆ 真砂陽地を中心にしたクインテットFrog of fogのファーストアルバム。最初の10秒で日本人の演奏と分かる。でも、こういうサウンド、嫌いじゃない、ていうか、正直好き。でも、正統派にしろクラブ調にしろ、フュージョンにしろ、日本人の演奏って、どうしてこう、聴いてすぐに日本人って分かってしまうんだろう。まあ、そこがJ Jazってことなんだろうけれど…。全曲オリジナルで聴き応えあるが、中でも1のアップテンポのdialogueと、6のafter partyのファンキーなエレクトリックサウンドが秀逸。


3.jpgJORAN CARIOU the path up ★★★★☆ フランスの新進ピアニストJORAN CARIOUのデビューアルバム。JORAN CARIOUはアコースティックピアノ以外に7ではフェンダーローズの演奏も聴かせ、また、2、8、9にギターを加え、変化に富んだ演奏を展開している。


4.jpgLITHIUM RED ★★★★☆ フィンランド出身のピアニストAlexi Tuomarila、ドラマーJonne Taavitsainen、ベーシストJoonas Tuuriに、ポルトガル出身のギタリストAndré Fernandesが加わったカルテット。最近、パット・メセニー的なギターを加えたカルテットの演奏をよく耳にし、確かに新鮮味が感じられ効果的だが、あまりに似たようなアルバムが多いと食傷気味になる。

2.jpgEd Jones For Your Ears Only ★★★★☆ サックス奏者Ed Jonesのリーダーアルバムだが、ピアニスト Ross Stanleyのそれかと聴き紛うほどピアノが光っている。1曲目のBrigitte Berahaのボーカルをフィーチャーした曲ではEdのサックスは最後の方に少し出てくるだけで、リーダーアルバムとはいえ、全体的にカルテットの調和を重視した構成になっている。70年代のマッコイ・タイナーのコンボを彷彿させる演奏もあり、ブリティッシュジャズもさまざまなタレントに富んでいることを感じさせる。

(これらのアルバムは、最近Apple Musicを通してダウンロードしたアルバムを紹介しています。)

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最近ダウンロードしたアルバム(5)ーピアノとベースの共演 [Jazz]

3.jpgEDWARD SIMON, SCOTT COLLEY, BRIAN BLADE STEEL HOUSE ★★★★☆ Edward Simon は1969年ベネズエラ出身のピアニスト。1989年に渡米後、テレンス・ブランチャードのバンド等で活躍した。ベースのScott CollleyとドラムのBrian Bladeとのトリオは、サックスのDavid Binneyを加えて2001年から活動しており、息のあった演奏を聴かせてくれる。このアルバムで、Edward Simonはアコースティック・ピアノのほかにも、エレクトリック・ピアノやキーボードの演奏も聞かれ、また2曲目には女性のボイスも混じるが、基本はアコースティックなピアノトリオの演奏。

1.jpgThomas Fonnesbaek & Justin Kauflin FONNESBAEK & KAUFLIN SYNESTHESIA ★★★★★ ベーシストThomas FonnesbaekとピアニストJustin Kauflin のデュオアルバム。スウェーデンで録音。Thomas Fonnesbaekは1977年生まれで、ニールス・ペデスセンに師事したデンマーク出身のベーシスト。Justin Kauflinは1986年生まれのアメリカのピアニストで、11歳の時、病気で視力を失っている。Thomas Fonnesbaekのピアノは繊細でいて力強く、70年代のキース・ジャレットを彷彿させるところがある。一方、Thomas Fonnesbaekのベースもピアノとの対話を楽しむかのように、単なる伴奏楽器の範疇を超えて、時に主旋律を力強く奏で、対等のパフォーマンスを聴かせる。とてもスリリングであるとともに、イマジネーションに富んだ作品だ。

5.jpgROSS McHENRY TRIO THE OUTSIDERS ★★★★☆ オーストラリアのベーシストRoss McHenryのリーダーアルバム。同じくオーストラリア出身のピアニストMatthew SheensとニュージーランドのドラマーMyele Manzanzaとのトリオによる演奏。エレクトリックベースとアコースティックピアノによる斬新なトリオの演奏が秀逸。10年以上前、一度だけオーストラリアのミュージシャンによるジャズを聴いたとことがあるが、たまたまかどうか、その時とは隔世の感がする良質なアルバムだ。

2.jpgANDRÉ MANOUKIAN APATRIDE ★★★★☆ André Manoukianはリヨン生まれのアルメニア系フランス人で、今年60歳のピアニスト。20歳でボストンのバークリー音楽院に学んだが、ジャズにとどまらず、あらゆる分野の多彩な音楽活動にたずさわってきた。このジャズアルバムでは祖父母の国アルメニアを思わせるオリエンタルな曲調の演奏が目立つ。実際、イラン、トルコ、シリアのミュージシャンが参加しているようだ。彼のルーツを探す音楽的探求の旅ともいえよう。

4.jpgKINGA GŁYK DREAM ★★★★★ Kinga Głykはポーランドの新進気鋭の20歳の女性エレクトリックベーシスト。ジャコ・パストリアスやエリック・クラプトンの曲をソロで引くYouTubeがアップされ、とりわけ後者は2千万ビューを記録している。本アルバムでもジャコのTeen TownとクラプトンのTears in Heavenをカバーしているが、その他の曲はすべて彼女のオリジナル。フュージョンアルバムながら、アコースティック・ピアノを用いている。ベースを前面に出した曲もあるが、他の曲も含めてどれも早弾きを誇示するようなものはなく、凄いベースを肩肘張らずにごく普通に弾いている。参加メンバーはHutchinson(ds)、Tim Garland(ss, ts)、Nitai Hershkovits(p)。
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最近ダウンロードしたアルバム(4)ー回想・1970年代 [Jazz]

2.jpg大野俊三 フォルター・アウト ★★★★☆ レコード・ショップ Universoundsの尾川雄介氏監修により1960年代後半~1970年代前半の名盤、菊地雅章のマトリックス、峰厚介のダグリとともに初CD化。1972年録音。大野俊三、当時23歳の初リーダー作。幻の名盤といわれたマトリックスは、私の気に入った曲は半分、ダグリはコルトレーンというよりも、当時絶頂を極めていたマッコイ・タイナーのコンボ(私はツボにはまったが)の焼き直し感が痛すぎて、ダウンロードには至らず。だが、どれも当時のJジャズのクオリティーの高さを物語っている。唯一ダウンロードした本作の大野俊三は、収録後、アート・ブレイキーに誘われて渡米、ギル・エバンスのビッグバンドに参加するなどして、グラミー賞受賞作にトランペッターとして2度も参加することになるが、実力派トランペッターの片鱗をすでに感じさせる。そのプレイは正確でありながらエモーショナルであり、当時のフレディ・ハバードやウディ・ショーを彷彿させる。ピアノ・エレクトリックピアノの益田幹夫、ベースの古野光昭と、70~80年代に活躍したミュージシャンのサポートも光る。最近、「これがジャズだ!」と言って中学生に往復ビンタを食らわせた浪花節トランペッターがいたが、フォルター・アウトこそ「これがジャズだ!」と誰をも納得させてくれる作品だろう。

3.jpgAzar Lawrence Bridge Into The New Age ★★★★☆ Azar Lawrenceといえば、上でも触れたマッコイ・タイナーのコンボに1973年から参加し、パワフルなテナー、ソプラノサックスを吹いていたが、本作はちょうどその時期に当たる1974年の録音。1曲を除いて自身のオリジナル曲。トランペットのWoody Shawとバイブの Woody Murray、それにボイスのJean Carnが演奏にバリエーションを加えている。70年代前半のジャズの熱気がむんむん伝わってくる1作。

1.jpgHERMETO PASCOAL  VIAJANDO COM O SOM ★★★★☆ HERMETO PASCOALの1976年の未発表音源。サンパウロのスタジオで録音。HERMETO PASCOAL は1936年生まれのブラジルのミュージシャン。作曲家、アレンジャーであるとともに、ピアノ、フルート、サックス、ギター等を演奏するマルチプレーヤーだ。渡米時にはマイルス・デイビスとも交流し、1970年のLive-Evilの録音に参加し、楽曲を1曲提供、2曲の演奏にドラム、ピアノ、ボーカルで参加している。本作ではHermeto Pascoalはエレクトリックピアノとフルート、ボイスを担当しているほか、8人のブラジル人ミュージシャンが参加している。26分以上に及ぶ4曲目のCasinha Pequeninaの演奏は圧巻!

4.jpgWILL SESSIONS KINDRED LIVE ★★★★☆ デトロイトのファンク・バンドWILL SESSIONSが70年代のマイルス・デイビスのBitches Brew、Black Satin 、What I Say、Weather ReportのRiver Peopleなどを当時の熱気そのままに忠実に再現したライブ演奏。なかでも2曲目のBitches Brewがいい。ゲストにキーボードのAmp Fiddlerが参加。

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最近ダウンロードしたアルバム(3)ー実りの秋 [Jazz]

b.jpgKamasi Washington Harmony of Defference★★★★★  アメリカの若手サックスプレーヤーKamasi Washingtonの新譜。Desire, Humility, Knowledge, Perspective, Integrity, Truthというタイトルのついた6曲からなる組曲で、各曲親しみやすいテーマのもとにアドリブが展開されていく。とりわけ最後の13分に及ぶTruthは最初のDesireのテーマに戻るが、途中から対位法的にKnowledgeのテーマがストリングスと混声コーラスで加わり、そこへKamasiのアドリブプレーが重なり、感動的な盛り上がりを見せてラストへと至る。Kamasiのサックスはコルトレーンにも通じる精神性を感じさせる。32分の短いアルバムだが、内容は大作と呼ぶに値する。

a.jpgTalibam!, Ron Stabinsky & Matt Nelson HARD VIBE★★★★★  ドラムのKevin Shea とキーボードのMatt MottelのユニットTalibam!にオルガンのRon Stabinskyとテナーサックスの Matt Nelsonが加わった演奏。2曲39分の演奏だが、キーボードの転調を繰り返す単純なテーマが通奏低音を奏でる中、Matt Nelsonのテナーがほぼ全編ハードなインプロビゼーションを繰り広げる息もつかせぬ展開に圧倒される。蛇足ながら、サルバドール・ダリの絵画か60年代後半のサイケデリックアートを彷彿させるジャケットデザインもいい。

c.jpgSimon Phillips Protocol 4★★★★★  上原ひろみのユニットですっかりお馴染みのドラマーSimon Phillipsのリーダーアルバム。ロック出身の彼も今年還暦。しかし、ハードロックのギタリストGreg Howeと、ベネズエラ出身のキーボード奏者Otmaro Ruiz との共演により、ハードで密度の濃いフュージョンミュージックを聞かせてくれ、飽きがこない。

d.jpgDima Bondarev Quintet I'm Wondering★★★★☆ ウクライナのドネツィク出身のトランペッターDima Bondarevのクインテットによるアルバム。彼はドイツのJazz Institut Berlinで学び、イギリスに移住。ドラムのJesus Vegaはアメリカ、ベースのMax Muchaはポーランド、ピアノのLudwig Hornungはドイツ、ギターのIgor Osypovはイギリスという文字通り多国籍バンド。90年代のニュー・メインストリームジャズを彷彿させる正統派ジャズの良質なサウンドが楽しめる。

e.jpgAndreas Herrmann The Child In Me★★★★☆ ドイツのピアニストAndreas Herrmannのギターを含むカルテットの演奏。パット・メセニー+ブラッド・メルドー・トリオの演奏に通じる清涼感がある。それも青少年期をテーマにした全編Herrmannによるオリジナル曲の賜物か。

f.jpgFABRICE ALLEMAN & CHAMBER ORCHESTRA UDIVERSE★★★★☆ テナー、アルト、ソプラノサックスにフルート、クラリネットまで吹くマルチリード奏者で、ジャズ、ロック、ファンクまでこなすベルギーのミュージシャンFabrice Alleman
が、ストリングスをはじめとしたオーケストラをバックに自らのカルテットで心地よいソプラノサックスの演奏を聴かせてくれる。サックスの中でもソプラノの音色を好む私にとっては、疲れた夜、酒を友にリラックスして聴きたくなるアルバム。

g.jpgWilliam Evans Donat Fisch Bänz Oester Jorge Rossy Andy Scherrer Schlitten★★★★☆ 情報が乏しく、演奏メンバーがWilliam Evans – piano、Donat Fisch – alto and tenor saxophone、Andy Scherrer – tenor saxophone、Bänz Oester – upright bass、Jorge Rossy – drumsということと、2015年にイギリスでレコーディングされたらしいこと以外は分からない。正統派ジャズのスタンダード集。しっとりとした演奏は秋の夜長に最適。
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最近ダウンロードしたアルバム(2) [Jazz]

B.jpgEkkehard Wölk Trio Another Kind of Faith★★★★☆ Ekkehard Wölkは1967年生まれのドイツ人。幼い頃からピアノを始め、バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、ドビュッシー等クラシックを学び、ハンブルグ大学、フンボルト大学で音楽学を学んだという経歴の持ち主。フルートやクラリネット、チェロを加えたこのアルバムも、バッハをはじめクラシックの香り立つ演奏が全編に溢れている。クラシックの曲をジャズにアレンジした演奏は昔からあるが、クラシックの要素を取り入れたオリジナル曲を演奏するジャズミュージシャンは珍しい。

C.jpgGerald Beckett Oblivion★★★★☆ ジャズフルーティストGerald Beckett のスタンダード集。彼はアルトサックスからフルートに転校した後、サンフランシスコ音楽院でクラシックの基礎を学んだという。コンボとしての演奏は凡庸だが、スタンダード曲をフルートでアレンジした新鮮さがある。とりわけ、オープニングのマイルスの名曲So Whatは秀逸。

E.jpgSimon Millerd Lessons and Fairytales★★★★★ アメリカのトランペッターSimon MillerdによるドイツのPablo Held Trioとの共演。他にギターやテナーサックス、バスクラリネット、ボイスが加わる。全編SimonのオリジナルによるECM的なヨーロッパジャズの色彩濃い演奏に貫かれている。

D.jpg松本圭司 STARGAZER★★★★☆ T-SQUAREでキーボードを担当していた松本圭司のリーダーアルバム。典型的な日本のフュージョンミュージックだが、アコースティックなサウンドを前面に出しており、またSTARGAZERのタイトル通り12星座をイメージして作られた曲が心地よく響く。

A.jpgADAM at × PHONO TONES Dr. Jekyll - EP★★★★☆ キーボーディストADAM atとPHONO TONESとのコラボアルバム。分かりやすいジャパニーズフュージョン。後半2曲で聞かれるPHONO TONESのPedal Steelの音色が印象に残る。

F.jpgJemal Ramirez African Skies★★★★☆ ドラマーJemal Ramirezのリーダーアルバム。典型的なメインストリームジャズがCD2枚分、118分続くが、セクステットのメンバーのうち、バイブのWarren Wolf, Jr. の演奏がとりわけ光っていて、このアルバムによいアクセントを与えている。

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最近Apple Musicでダウンロードしたアルバムたち [Jazz]

1.jpgSTEFANO PREZIOSI QUARTET PLAYS STANDAEDS ☆☆☆☆ ナポリ出身の40代半ばのアルト奏者STEFANO PREZIOSIのスタンダード集。基本はパーカー派のアルト奏者だが、It Could Happen ti YouやEstateなどではソプラノも吹く。軽快なテンポの曲が多く、なじみやすい。

2.jpg山中千尋 モンク・スタディーズ☆☆☆☆☆ セロニアス・モンクを取り上げながら、アコピが前面に出た曲はほぼ1曲で、あとはシンセやオルガンでモンクを新解釈という山中千尋の真骨頂。異分野から参加したディーント二・パークスのドラミングも新鮮。中でもオープニングのオリジナル曲ハートブレイク・ヒルはとても斬新な響き。山中千尋の新境地。

3.jpgJ.A.M Silent Notes☆☆☆☆ SOIL&"PIMP"SESSIONSのリズムセクションによるトリオの4thアルバム。極めてオーソドックスで心地よいジャズを聴かせてくれる。

4.jpgChristof Sänger Descending River☆☆☆☆ ドイツ人ジャズピアニストChristof Sängerのトリオ演奏。円熟した演奏についつい引き込まれてしまう。

5.jpgBob Bralove, Henry Kaiser and Chris Muir 
Positively Space Music☆☆☆☆☆ ベテランミュージシャン3人による2時間30分に及ぶ一大ロック宇宙組曲。シンセサイザーを駆使したオーケストライゼーションは交響曲をも想わせ、かつハードで濃厚なロック感が全編を貫いている。毎晩、ものを書きながら聴いている。

6.jpgChristian Scott aTunde Adjuah Diaspora ☆☆☆☆ ジャズ100周年3部作『THE CENTENNIAL TRILOGY』の第2弾。マイルスの影響を色濃く受けながらも、独自の世界観を持った音楽をつくり出している。

7.jpgDenys Baptiste The Late Train☆☆☆☆ 文字通り「遅れてきたコルトレーン」。3のascentは、エレクトリックサックスでワウワウの利いたエフェクトの演奏も楽しめる。しかし、全体としてはトレーンへのオマージュだ。

8.jpgEstrada Orchestra Jazzbeatjaatis☆☆☆☆☆ エストニアのジャズファンクグループの衝撃の日本デビュー作。本来私の好みの範疇ではないのだが、一度聴いて病みつきになった。この存在感は圧巻!

9.jpgFRANK CATALANO & JIMMY CHAMBERLIN Tokyo Munber 9☆☆☆☆ FRANK CATALANO はとてもファンキーなサックスを聴かせてくれるが、リズムセクションは完全にコルトレーンのそれ。最後のA love Supreme, Pt.1でその両者の融合の醍醐味が存分に発揮される。

10.jpgTERRY GIBBS92 Years Young: Jammin' at the Gibbs' House☆☆☆☆ 92歳のバイブ奏者の脅威のアルバム! こんな味な演奏をするバイブ奏者がいるとは知らなかった。100歳になってもビブラフォンを元気に叩いてるんじゃないだろうか?

11.jpgBaptiste Trotignon & Yosvany Terry  Ancestral Memories Import☆☆☆☆ フランスのピアニストBaptiste TrotignonとアメリカのYosvany Terry(アルトサックス)の共演作。これといった特徴はないのだが、何となくコンビネーションがよくて聴かせてくれる。

松田聖子が歌ったジャズ「SEIKO JAZZ」 [Jazz]

SEIKO.jpg松田聖子が出したジャズアルバムが一部で話題になっているようだ。私はジャズボーカルはほとんど聴かないのだが、Apple Musicの新曲でその「SEIKO JAZZ」が先週配信されたので、3回ほど聴いてみた。「グラミー賞はじめ数々の賞を受賞した川島重行のプロデューサーで、デビッド・マシューズがリーダーを務めるマンハッタン・ジャズ・オーケストラやマンハッタン・ジャズ・クインテットの精鋭メンバーがレコーディング参加」という贅の限りを尽くしたアルバムだ。
確かに松田聖子はアイドル時代から歌唱力があったし、サントリービールのCMソングで知られる「SWEET MEMORIES」というジャジーな曲も過去にある。私は聖子ファンではないが、「SWEET MEMORIES」は彼女独特の甘えたような歌声が曲にうまくマッチし、英語の歌詞もけっこうイケていて、気に入っていた。
しかし、今度のアルバムは、なるほど55歳の円熟した松田聖子のこのアルバムに注いだ情熱が感じられるものの、ある意味優等生的過ぎていて、後に残るものがない。喩えていえば、ウィントン・マルサリスのトランペットにも似ている。
Jポップや演歌の歌手がジャズに挑戦した例は少なくない。比較的最近では、八代亜紀、UA、JUJUなど。なかでもJUJUは、ジャズを志してニューヨークに渡ったものの、自分の目指している音楽がジャズの範疇に納まりきれないものと気づきポップスに転向した過去を持つだけあって、過去2枚出したアルバムは力作で、私としては珍しく繰り返し聴いている。特に最初のアルバム「DELICIOUS」に収められた「Moody's Mood For Love 」は難曲だと思うのだが、さりげなく歌い上げていて、プロ顔負けだと深く感銘した。
逆の例としては、もう20年近く前のこと、当時人気だったあるジャズ歌手がJポップに挑戦した歌を、たまたまラジオで聴いたことがあるのだが、その時「この人、こんなに歌が下手だった?」という感想を抱いたのを覚えている。
歌というのはかくも難しいもの。演歌の達人だからといってジャズをやらせてもうまいとは限らないし、難しいと思われているジャズの歌手にJポップを歌わせても凄いという訳でもない。何を歌わせても超一流で人々をうならせることができる美空ひばりのような歌手は、百年に一度出るか出ないかだろう。
そういう意味で、松田聖子の「SEIKO JAZZ」は、「聖子らしく贅の限りを尽くして制作したジャズアルバム」以上でも以下でもないと思う。

音楽配信サービスで広がるJAZZの世界 [Jazz]

Jazzについてこのブログで書くのは実に2年ぶりだ。この間、ここで取り上げるだけの音楽に出会えなかった。
ところが、去年末、Apple Musicを使うようになって、Jazzの世界が一気に広がった。以前、Amazonプライムのお試しをして、1ヶ月間音楽配信を受けたが、少なくともJazzに関してはあまりにお粗末な品揃えで、ダウンロードして聴いたアルバムは1つだけだった。なので、3,000万曲といわれるApple Musicも、最初はあまり期待していなかった。ただ、3ヶ月間無料で聴けるので、どんなものか試してみようという気持ちから始めてみた。しかし、結果は予想を大いに裏切るものだった。
ことJazzに関しては、私がこの間CDで好んで聴いてきたミュージシャンの曲はほぼフォローされている。そして、毎週数枚ずつニューアルバムがアップされるので、自分が今まで接したことのなかったミュージシャンもいろいろ聴くことができる。
Jazzに関して、従来情報源はネットショップやジャズ雑誌で、ネット上では一部試聴できるものもあるが、いいかなと思ってCDを買ってみると裏切られることも少なくなかった。以前はFMのジャズ番組も聴いていたが、ラジオを聴かなくなって久しい。
つまり、新しい生のジャズの情報源が限られているため、最新のJazzに出会うことがなかなかなかった。ところが音楽配信サービスは、それを可能にしてくれた。
私は、3ヶ月の無料期間が過ぎても、月額980円を払って契約を続けることにした。980円なら年間1万ちょっと、CDのニューディスクを3~4枚買うだけの値段で、Jazzを幅広くいくらでも聴くことができ、気に入ったアルバムはダウンロードしていつでもどこででも繰り返し聴けるのだ。

最初にはまったのは、彼女が中学生の頃、YouTubeで聴いて凄いと思ったドラマーの川口千里。オルガニストの大高清美とのユニット「キヨセン」のアルバムも含めて早速ダウンロードしてじっくり聴き、彼女の才能に改めて感心させられた。こんなドラミングはビリー・コブハム以外に聴いたことがない!
海外の比較的新しいミュージシャンにも何人か出会えた。まず、ドラマーのジョナサン・ルンドバーグ。ドラム自体よりも、洗練されたサウンドが気に入った。
そして、今いちばんはまっているのがトランペットのクリスチャン・スコット。マイルス以降のジャズトランペットの新しい方向性を示しているように思える。
そのほかにも、若い頃、FMのライブ番組をテープに録音して何度も聴いていた高瀬アキが、その後ドイツに移り住み、数々の賞を取るなど現地で今も活躍していることを知った。往年と違い、その後フリーの方向へ進んだようだが、新譜で聴いたアルバムはサックスとのデュオで、気迫満点で、けっこう気に入っている方だ。
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私はこの10数年、仕事をしながらJazzを聴いてきたが、それは手持ちのCDを繰り返し聴き返すだけで、ライブラリーは徐々に増えるものの、きわめて保守的な営為であった。それがApple Musicを聴き始めてからは、ほぼ毎日、iPadで1日中曲を流している。今使っているiPadAir2はステレオサウンドの音質もよく、机やテーブルの上に置くとそれがスピーカーになって音質がさらに迫力を増すので、わざわざスピーカーにつなぐことはしていない。
日本は電子書籍の普及が遅れているので、本は未だ紙で読むことの方が多いのが実情だが、今度引っ越すときには、手持ちのCD数百枚は大部分処分するつもりでいる。

遂に上原ひろみを超えた!―桑原あい「LOVE THEME」 [Jazz]

天才ジャズミュージシャンには3つのタイプがある。第一はチャーリー・パーカーやクリフォード・ブラウン、さらにはジョン・コルトレーンのように、今が盛りの桜のごとくパッと花開いてパッと散ってしまうタイプ。次は帝王マイルス・デイビスのような永続革命家タイプ。最後はチック・コリアのように、変わることはないがいくつもの抽斗(表現方法)を持っていて聴く者を飽きさせない職人技タイプ。
12年前に上原ひろみが登場した時は、もの凄い新星が登場したと驚き、これからどんなに変わっていくのか楽しみに思ったものだ。しかし、彼女は一向に変わらない。頑ななまでにひとつのスタイルにこだわり続けている。熱狂的なファンは満足だろうが、私など10年もするとさすがに飽きてくる。

zaP2_G1992573W.jpg2012年にこのブログでデビュー作を取り上げた桑原あいがカバーアルバムを出すといい、そのデモビデオを聴いたら凄そうなので、ほぼ2年ぶりにニューディスクを買ってしまった。そして、それ以来1週間、数え切れないくらい聴いてしまった。ニューディスクにこれほどはまるのは、12年前の山中千尋の「When October Goes」以来だ。
カバーといっても、原曲をすべて知っているわけではないが、初期の山中千尋のように原曲が分からないほど凝ったアレンジをしているわけではないものの、どの曲も聴かせてくれる。とくに、Grandfather's Waltzのバッハを思わせるフーガのアルコベースとの掛け合いは秀逸!
デビューアルバムでも指摘したが、ベース重視はこのアルバムでも変わらない。特に今回はprojectのパートナーといっていい 森田悠介(el-b) だけでなく、ウッドベースの須川崇志を加えているが、こちらも聴かせてくれる。どっかから変なオッサン連中を引っ張ってくるのではなく、若くて気の合った、そしてこれがいちばん重要なことだが、才能ある仲間たちで奏でるprojectならではの音が楽しめる。
それにしてもtrio projectの過去の作品とは大きく異なるコンセプトに、ある疑問を抱いて過去の作品も聴いてみたのだが、意外と違いがない。つまり、これは桑原あいというジャズミュージシャンがすでに自己のスタイルを確立しているということなのだろう。この作品で、新たな抽斗を得たということか?
日本のジャズ界は一時バークリー音楽院を主席で卒業することが一流の証―みたいな風潮があったが、最近は寺久保エレナといい桑原あいといい、国内で立派にグローバルスタンダードが育ってきている。日本が今世界にいちばん誇れるものといったら、ひょっとしてJazzかもしれない。